地域からの社会保障再構築

大友信勝さんの問題提起 排除よりも包摂を!

 『「貧困の罠」−セーフティネットの課題から地域自治の視点で考える』というタイトルに惹かれ、日曜日にもかかわらず、昨日は東京・生活者ネットワーク国政学習会に参加しました。
 龍谷大学社会学部教授・大友信勝さんが問題提起者です。大友さんは2000年に制定された韓国の基礎生活保障法と比較しながらわが国のセーフティネットの課題、ワーキングプアなど新しい貧困の問題を浮かび上がらせました。

 所得の再配分がほとんど機能不全に陥っている日本の現実、湯浅誠さんの言葉を借りれば一端すべり降りると遊具のすべり台とは違って這い上がれない希望の持てないすべり台社会、新しい貧困の根っこには新自由主義のもたらした功罪が明らかだ。高齢者だけでなく実質の可処分所得が生活保護受給者よりも低いワーキングプア。日本では稼動年齢層(18〜64歳)に属するこの人たちには最低の社会保障である生活保護も利用しにくい。逆にその事実を利用して生保を受給しない貧困者がこんなにいるのだからと生活保護基準も切り下げようとしている、これが罠だと大友さんは指摘します。

 韓国で実態に即した社会保障の法律が制定されたのはなぜか。この不安に真っ向から向きあい、実態調査、分析、最低生活の検証、基準の設定などが当事者や市民の意向を反映するしくみのなかですすめられたからだそうです。だからこそ市民運動や社会運動が連帯して法制化をバックアップできたと。いろいろな奨学金や手当てを受給している人が多ければ自ずと関心をもって法制化をみていくのではという指摘もありました。

 アメリカ追従の日本を危ぶむ声はあちこちで聞かれています。国民生活の切り下げに介護や医療など社会保険の負担増が追い討ちをかけています。雇用、賃金水準、住居の安定も図らず、大企業、高所得者が税制優遇されているおかしさ。雇用、社会保険、公的扶助のセーフティネットに大穴があき、破れた状態になっていいるにもかかわらず、全国知事会、市長会も「新たなセーフティネットの提案」06年で、自己責任や保護基準の引き下げなど国に右に倣えとばかり提案しているのは許せない。
 地域の首長がこんな提案書を出していたと知ったら市民としてどう思うでしょうか。むしろ現場の実態を把握し、地域から国の制度改革に一矢を報いる責任がある。こういう大きな問題にこそ情報共有と参加が大前提だと改めて確信しました。