子どもの居場所 ≪生き活きレポート143号から≫

生き活きレポート143号では一面で子どもの居場所について取り上げました。詳しくは143号

 

子どもたちに聞きます

身近なところに何時でも一人でも予約なしに使えて、ホッとできたり、やりたいことができる場がありますか? 

 狛江・生活者ネットワークは設立以来子ども自身の育ちを応援し、遊び場・居場所を調査、政策提案してきました。30年間を振り返ると市民の声で狛江市には子どもの意見表明の場などいろいろなしくみや場の提供が少し実現しました。しかし社会や自然環境の変化にともない、子どもの育つ環境も大きく変化し、IT・携帯電話等新たな課題も出てきています。

下校時間の早い水曜日の放課後、市内の公共施設・公園や児童館、小学校などをまわってみました。

晴天の場合は校庭で遊んでいる子どもの数は他施設に比べて圧倒的に大勢です。次に多いのが子どものための施設岩戸児童センターでした。ここでは学区外の小学生も遊んでいます。場所の使い方も子ども同士や大人との話し合いで決められています。屋内体育施設で低学年から高学年まで動きの激しい球技(タスケ、卓球)を楽しんでいる子が多く、決められた場所でゲームをしている子は少数でした。併設の学童保育所(小学生クラブ)の子どもも一緒に遊びます。2階の子ども家庭支援センターでは、夕方育パパも何組か混じって乳幼児が遊んでいました。

案外子どもが集まっているのが野川・南部地域センターの畳敷きのフリースペース。下校の早い毎水曜日には平均2030人の子どもたちが集まってくるそうです。折紙を折りながらおやつを食べる一年生の女の子たち、宿題を一緒にやっている中~高学年の子ども、男子はほとんどの子どもがゲームを持ってきています。時々図書室や建物周りの緑道や庭にも出て鬼ごっこなど自由に過ごしていました。テスト前には中学生もここで学習しているそうです。地域センターや公民館は休館日以外何時でもふらっと入れ、このスペースは無料です。ただし大人の使い方に合わせなければなりません。市民センターの地下と2階にもフリースペースがあります。小学生と交代に中高生がやってきて勉強やおしゃべりを楽しむ姿がありました。地域センターや公民館には楽器が持ち込める防音室がありますが、団体登録・大人同伴がルールで、有料のため子どもの利用はほとんどないそうです。

マップに落としたように子どもが主体として自由に遊んだり余暇活動ができる公的な場は十分とは言えません。地域に家庭以外に学校しか安心・安全な居場所がないということは逆に子どもにとっては不幸です。子どもの居場所は空間だけを指すのではありませんが、少なくとも子どもが安心でき、他者と対等な関係で自由に過ごすことができ、自己肯定感を確認しながら仲間や大人との関係性を育むことができる場であって欲しいと思います。禁止事項の多い公園が多い中、来年開所予定のプレーパークや数年後の北部児童館開館が待たれます。社会への参加の第一歩としても子ども参加で児童館建設、運営を進めることを狛江・生活者ネットは提案しています。

多くの人達が環境の人工化・遊びの喪失に警鐘を鳴らし、子どもの成長に欠かせないものとして「ふれあい、運動、人とのつながり、自然」(Moving  to  learnより引用)をあげています。

近年子どもの貧困が社会課題として顕在化しています。今年朝日新聞が実施したデジタルアンケート「家庭の経済的事情にかかわりなく、希望するすべての子どもに与えられるべきだと思うもの」の結果を分析した首都大学東京教授の阿部彩さんによれば、「これは子どもにとって何が最低限の生活レベルなのか、社会的に合意できるところはどこかを問うもので、市民の過半数の支持があれば、その社会で生きる子どもにとって最低限保障すべきものと位置づけ、その必需品が欠けた状態を貧困の指標とする」というものです。飢えだけでなく、子どもの生活の質を保障する視点が大事だと指摘しています。

子どもへの社会保障の支出が欧米の半分と言われる日本ですが、94年に子どもの権利条約を批准し20年がたっています。子どもの権利の実現のためにも生活圏を豊かに多様にしていくことは大人の責任ではないでしょうか。