一票を投じて政権を交代させたのは私たち有権者。お互いに人任せにしないでしっかり政治をすすめていきたい。
CHANGE!
【社説】
八ッ場ダム 民意の重さを考えたい
民主党が建設中止を掲げた八ッ場(やんば)ダムにつき、国土交通省が本体工事の入札を延期した。派生する問題はいくつもあるが、総選挙で表明された民意を誠実に受け止め、収拾を図るべきではないか。
民主党は、利根川水系吾妻川・八ッ場ダム(群馬県)の建設中止をマニフェスト(政権公約)に掲げ、今回の総選挙に臨んだ。
同党は全国で圧勝した。八ッ場ダムの負担金を支出する東京都と、関東地方の神奈川を除く五県を見ても、七十選挙区中五十七選挙区で当選者を出し、どの都県でも過半数の選挙区を制した。とくに東京、千葉、埼玉では圧倒的勝利といってよい。
もちろん、すべての有権者がダム建設中止を求めたのではあるまい。しかし表れた民意の重みは、十分に尊重されねばならない。有権者への公約が安易にひっくり返っては、マニフェストや選挙そのものの意義が疑われる。
同省は新大臣にダムの必要性、事業の経過などを説明、判断を求める。だが大臣の背後に民意が控えていると、最も理解する必要があるのは同省の官僚たちだ。
同省によれば、利根川水系の治水は、二百年に一回の確率で起こるカスリーン台風(一九四七年)規模の洪水に備え、八ッ場ダムもその一端を担う。また首都圏への安定した水供給も受け持つ。
国交省の出した洪水流量や水需要の予測には、以前から疑問が出されている。
ダム建設中止の公約が支持された理由の一つは、同省の出すデータを国民がうのみにしなくなったことではないか。
川辺川ダム(熊本県)、大戸川ダム(滋賀県)の凍結が示すように、公共事業の押しつけは難しいと自覚しなければならない。
八ッ場ダム建設中止で継続より事業費増との懸念があるが、完成した徳山ダム(岐阜県)の場合当初より一・四倍の費用増だった。
地元負担金を支出した都県が、中止で国に返還を求めるとの動きもある。多数の有権者が中止を求めたのに、あえて返還を求めるのだろうか。
どうしても解決すべきは、ダム湖に水没、五カ所の代替地に移転を予定した人々の生活再建と地域振興である。当初は反対だが、中途でやむなくダムを受け入れ、移転を決意した人もいる。
文字通りダムに翻弄(ほんろう)された人々への支援・救済は急がねばならない。民主党は新しい法制定も視野に入れている。どんな形にせよ、早急に手を打つべきであろう。